「頭がぼんやりして働かない」「言葉が出てこない」「やる気も集中力も湧かない」
——そんな感覚が続くとき、それは単なる“疲れ”ではなく、「ブレインフォグ」と呼ばれる脳の機能不全のサインかもしれません。
ブレインフォグとは、脳の一部の働きが“一時的にかすむ”ような状態。
記憶力・判断力・思考のクリアさが落ち、なんとなく頭に靄がかかったような感覚が続きます。
Brain Nexus Labでは、この状態を「症状」ではなく、「脳の余白が失われた状態」と捉えます。
つまり、足りていないのは情報でも刺激でもなく、“脳が息をつける空間”なのです。
今回は、ブレインフォグを感覚的・身体的な視点からとらえ直し、日常の中で“脳の余裕”をデザインする方法を紐解いていきます。
ブレインフォグとは「余白の消失」である
思考のスペースが失われると、脳は“もや”を起こす
人は1日に6万回以上の思考をしていると言われます。
それが止まることなく、ノイズのように脳内を埋め尽くしていくと、“思考の圧迫”によってクリアさが失われていきます。
この状態が続くと、判断力や記憶力が落ち、さらに「思考しなきゃ」という焦りによって、ますます脳は混乱していく。
いわば、脳の中に“思考の渋滞”が起きているようなものです。
これを解消するには、情報を足すのではなく、「思考しない時間」「感覚だけの時間」を増やして、脳のスペースを空ける設計が必要になります。
脳だけでなく、腸が“思考の霧”を吸収している
ブレインフォグは「脳の問題」だけで起こるのではありません。
実は、腸の状態が悪いと、脳にも炎症性のストレスが伝わり、思考のぼやけや集中力の低下を引き起こすのです。
腸内環境が乱れていると、「思考が散る」「頭がのぼせる」といった感覚が出やすくなります。
だからこそ、腸のリズムを整えることが、脳の余裕を取り戻すための近道。
特に「温める」「発酵食品をとる」「ゆっくり咀嚼する」といった腸からの穏やかなケアが、脳の静けさを呼び戻してくれます。
皮膚の緊張が脳を無意識に“戦闘モード”にしている
肌が乾燥しているとき、硬い素材に触れているとき、気づかないうちに身体は緊張しています。
この“皮膚ストレス”が脳に伝わり、無意識に警戒モードを起動させてしまうことがあります。
結果として、リラックスできず、思考の整理も進まず、脳が常に“情報処理優先”の状態に陥る。
その積み重ねが、ブレインフォグを慢性化させる原因になります。
やわらかい衣服、心地よい肌触りのタオル、ぬるめのお風呂——
皮膚に優しい環境が、脳に「今は休んでいいよ」と伝えるスイッチになるんです。
“脳の余裕”を取り戻す日常デザインの工夫
思考しない“身体の時間”を1日のどこかに設ける
脳が疲れているときほど、情報や思考に頼ってしまいがちです。
でも実は、脳の靄が晴れるきっかけは、「思考を止めること」ではなく、「思考から身体へ意識を降ろすこと」にあるんです。
たとえば、静かなストレッチ。湯船の中での深呼吸。裸足で床を感じる。
そうした“言葉のない時間”が、脳にとっての空白になります。
この空白は、脳を一時的に“省エネモード”に切り替え、
過剰な情報処理で濁っていた意識を、静かに沈殿させていくリズムを生み出してくれるのです。
「ぼんやりポイント」を日常にちりばめておく
ブレインフォグの対策として意外に有効なのが、“意図的なぼんやり”。
テレビでもスマホでもない、“考えないぼんやり”の時間と空間を用意することで、脳は回復のチャンスを得られます。
たとえば、
・湯気がのぼるのを眺める
・空を見上げる
・キャンドルの揺れをぼーっと見る
こうした無意味に見える行為は、実は脳の深部で起きている“自動整理”をサポートしてくれます。
ぼんやり=休息ではなく、「整理されるまで触らない」という高等技術なんです。
感覚を“微調整”する余白が、脳の濁りを溶かす
忙しさや焦りの中にいるとき、わたしたちは自分の感覚を“粗く”扱いがちになります。
たとえば、呼吸の速さに気づかない。服の締めつけを我慢する。足裏の圧を無視する。
でも、感覚を取り戻すには、ほんの少しの「気づき直し」が効きます。
・足を一度、ゆるく組み直す
・手のひらの温度を感じてみる
・飲み物を“喉ごし”ではなく“触感”で味わう
こうした微調整は、脳が「処理を減らしてもいい」と感じるきっかけになり、靄がひと筋ずつ晴れていく感覚をもたらしてくれます。
ブレインフォグが教えてくれる、“今”のサイン
靄の正体は、「ちゃんと休めていない」という身体の訴え
ブレインフォグは、単なる不調ではなく、脳がこれ以上の処理に耐えられないことを知らせる信号です。
つまり、「ここまで蓄積していたんだよ」という身体からのメッセージ。
「集中力がない」「忘れっぽい」「決められない」
それは能力の低下ではなく、余裕のキャパが満ちているだけ。
この状態に気づいたら、責めるのではなく、まず**“余白を回復させる選択”**に切り替えてみること。
その一歩が、靄を晴らし、自分の芯に戻るための再起動になるのです。
結び:脳をケアするとは、“考えないで感じる”ということ
脳を動かすことは得意でも、脳を休ませることは、意外と難しい。
でも、そこに気づけたあなたは、もう大きな一歩を踏み出しています。
Brain Nexus Labが伝えたいのは、
脳=情報処理機ではなく、「感覚の調整器」であるという視点。
その脳をケアするとは、つまり——
考えることをやめて、感じることに戻ること。
今日、ほんの5分でも。
目を閉じて、呼吸に触れて、光のぼんやりした世界に沈んでみてください。
その時間こそ、あなたの脳にとっての一番の処方箋かもしれません。