疲れているはずなのに、なぜか眠れない。
ぼーっとしているのに、脳がどこかざわついている。
そうした感覚の背景には、「気づいていない緊張」がひっそりと隠れていることが多いのです。
私たちの身体は、無意識のうちに「力を入れてがんばる」クセを身につけています。
肩を上げたまま作業する、呼吸を浅くする、視線を固める。こうした些細な習慣が、脳に“静けさ”を許さない状態をつくり出しているのです。
Brain Nexus Labでは、こうした“無意識の力み”に光を当て、感覚を取り戻すことで脳を静かに整える方法を探求しています。
今回は、姿勢・目線・呼吸という日常の3つのポイントから、「気づかぬ緊張」をほどく技術をお伝えします。
力みのない身体が、脳を回復させる
姿勢をゆるめると、脳の緊張回路がオフになる
「姿勢が悪いと疲れる」とよく言われますが、それだけではありません。
実は、姿勢の“力み”が脳を常に緊張状態にしているのです。
背筋を過剰に伸ばしたり、肩に無意識で力が入ったりすると、脳は「戦闘モード」に切り替わります。
反対に、骨格で立ち、筋肉はできるだけ“力を抜く”ように意識すると、脳波はアルファ波〜シータ波に近づいていきます。
力を入れるのではなく、重力に身を預けるような感覚。
これが、思考の渦から抜け出し、脳に静けさを取り戻す鍵になるのです。
目線を少し変えるだけで、思考がゆるむ
人の目は、ただ「見る」だけでなく、脳の注意をコントロールするレバーのような役割を持っています。
パソコン作業やスマホを見続けているとき、目の動きが制限され、視野も感覚も“一点集中”になりがちです。
そこでおすすめなのが、目線の「水平〜やや上」を意識的に取り戻すこと。
視線が少し上に向くだけで、脳は“俯瞰”や“想像”の回路を使いはじめ、思考の負荷がゆるみます。
また、遠くの緑や空を見ることで、皮膚や腸が「今、安心だよ」と感じやすくなり、身体全体がゆるんでくる効果もあります。
呼吸を深めるより、止めないことを意識する
「深呼吸しよう」と思っても、うまくいかないことってありますよね。
それは、多くの場合、「呼吸が止まっていたこと」に気づいていないから。
集中や緊張の中では、知らず知らずのうちに息を止めているもの。
まずは“止まらずに、呼吸が流れているか”に意識を向けることが大切です。
気づかない緊張を解くには、呼吸の「質」を変えるのではなく、“呼吸がある”ことを思い出すことから。
それだけで、脳は「いま安全だ」と感じ、静かに再起動を始めてくれます。
身体の“ゆるみゾーン”を日常にちりばめる
一日の中に“脱力ポイント”を意識的に設ける
緊張や力みは、気づかないうちに蓄積していきます。
だからこそ、意識的に「力を抜く瞬間」をちりばめておくことが脳の回復には重要です。
たとえば、椅子に座ったときに腰と背中の接地を確かめてみる。
洗顔時に手の力を抜いて、肌に触れる感覚をじっくり感じる。
信号待ちで肩を一度すとんと落とす。
こうした1〜2秒の“ゆるみ動作”が、脳の緊張回路をオフにしてくれます。
脱力は特別な技術ではなく、「戻る場所」なんです。
だからこそ、日常の中にその“拠点”を点在させておきましょう。
腸を温めると、脳も“警戒モード”を脱ぐ
緊張が慢性化しているとき、腸もたいてい張っていたり、冷えていたりします。
それは、身体全体が「いつでも備えていないといけない」と思っているサイン。
そんなときにおすすめなのが、腸に意識を向けて温めること。
湯たんぽを当てる、お腹をなでる、温かい飲み物をゆっくり飲む。
これだけで、副交感神経が優位になり、脳は「いまは安心していい」と静まっていきます。
腸は、脳が落ち着く“きっかけセンサー”。
だから、力みを抜きたいときは、まず腸に「もう戦わなくていいよ」と伝えることがいちばん効果的です。
皮膚を整えることが、思考の“雑音”を減らす
乾燥した肌、摩擦の多い服、ピリつく素材——
こうした「肌が落ち着かない環境」は、実は脳にずっと微細なストレス信号を送り続けています。
だから、触れて心地いいものを選ぶだけで、脳の静けさが戻ってくることもある。
天然素材のタオル、やわらかい衣服、肌に合った保湿。
それは単なる美容や快適さの話ではなく、思考を静める“感覚の整音”なのです。
皮膚の安心があってこそ、脳も言葉もやわらかくなれる。
あなたの脳のざわつきは、もしかしたら肌のSOSかもしれません。
“静かな脳”が選ぶ言葉は、やさしくなる
力みを手放すと、選ぶ言葉も変わってくる
脳が緊張しているとき、人の言葉も、自分の言葉も、どこか硬くとがって感じられます。
反対に、身体がゆるみ、皮膚が整い、腸が安心しているとき、言葉の選び方そのものがやわらかくなっていく。
これは、感覚と思考が無理なくつながっている状態。
何を言うかより、どんな状態で言葉が生まれるかが、コミュニケーションの質を決めるのです。
だから、「疲れていると感じたとき」は、“静かな脳”に戻るサイン。
やさしい言葉を使いたいなら、まずはやさしい姿勢と呼吸から始めてみてください。
結び:脳は、ゆるんだ身体に静かに宿る
私たちは知らず知らずのうちに、たくさんの“無意識の努力”をして生きています。
姿勢を正しすぎている。
呼吸を止めている。
視線を一点に固定している。
でも、本当に脳が力を発揮するのは、余白とゆるみがあるとき。
感覚のゆらぎを受け入れ、少し肩の力を抜いたとき、
静かに、でも確かなエネルギーが湧いてきます。
Brain Nexus Lab が提案するのは、“感覚の静けさ”から脳を整える技術。
今日も、思考がすこし重たいと感じたら、まずは身体のどこかを「ほどいて」みてください。
きっとそこから、静かな力が戻ってきます。